大会実行委員長 相津頼子・犬塚久美子・畠山衛
2023 年のCAJLE年次大会は、8 月17日・18 日にケベック州モントリオール市のマギル大学のサポートのもと、ベストウェスタン・ヴィルマリー・ホテルにて開催されました。カナダだけでなく、日本やアメリカから 78 名の日本語教育関係者にご参加いただきました。「これからの日本語教育:多様化する社会とともに」というテーマのもと、新しい視点に触れ、日本語教育における多様性や今後の方向性に関して認識を新たにすることができました。さらに、2019年以来4年ぶりの対面開催となり、カナダの日本語教育に携わる者にとって、画面越しではなく直接会って話し合い、交流できることの価値を実感する意義深いものとなりました。
ラマポ大学のドーア根理子先生による基調講演では、「『日本語』再考:言語の『ユニット思考(unit thinking)』を超えて」というタイトルのもと、日本語教育を超えた視点から、同質化を強要する規範的ユニット思考とどう向き合うか、また本質的に言語に存在する多様性について考える機会を得ました。また、「『日本語』『間違い』『通じる』って何?:標準語を超えた多様な言語教育を目指して」という教師研修では、実際の日本語教育への応用として、評価をする側の教師にも規範性にゆれが存在することを再認識し、規範的ユニット思考からの脱却へ向けた取り組みについて話し合うことができました。
二つ目の教師研修では、ニューヨーク市立大学ハンター校の櫻井陽子先生の「学習者が『できる (Can -Do)』を実感する教材作成ー 課題遂行型アプローチ再考 ー」と題した実践に直結する教師研修を受ける機会を得ました。学習目標としてのCan-do について再確認するとともに、それを目指した教材作成、授業・評価の実践について共に考え、話し合うことで理解が深まりました。
三つ目の教師研修では、カナダ第二言語教師会(CASLT)からお招きしたシャーブルック大学のフィリッパ・パークス先生に”Differentiated Teaching in a Language Classroom: Strategies for Teaching to Different Skill Levels”というタイトルでお話しいただきました。言語教育において習熟度・学習スタイル等の異なる学習者の混在するクラスにおいて、学習者の教育機会への平等なアクセスを確保しつつ、効果的に教える方法について学びました。
また、グローバルネットワーク(GN)ワークショップとしてカールトン大学の林寿子先生とプリンストン大学の柴田智子先生を講師に「日本語使用者の多様な言語、文化、社会的経験に対する理解と実践への応用」というテーマで行われた公開ハイブリッドセッションでは、日本語と日本語使用者の多様性についての視野をさらに広げることができました。

CAJLE2023年次大会集合写真
本大会では 24 本の口頭発表と 17 本のポスター発表がありました。研究成果の発表、実践報告などがあり、活発な意見交換を行うことができました。基調講演・教師研修の録画やスライドは 会員限定ページにおいて2024 年9 月末まで、口頭発表・ポスター発表の資料は、大会参加者限定で2023年9月末まで公開される予定です。大会のプロシーディングも CAJLEのホームページで順次公開される予定ですので、ぜひご覧ください。公開日については後日メールでお知らせいたします。
最後になりましたが、今回の大会開催に当たりまして、ご支援・ご協力をいただいた国際交流基金、モントリオール日本商工会、マギル大学、アルバータ大学高円宮日本教育・研究センター、Blue Tree Books、ユニクロ・カナダの皆様に感謝申し上げます。また、お忙しいところ、開会式でご挨拶いただきました在モントリオール日本国総領事館の齊藤純総領事、国際交流基金トロント日本文化センターの山本訓子所長に心より御礼申し上げます。そして、大会にご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。是非またCAJLE年次大会でお会いできることを願っております。